金属の選び方

料理に向いてる金属は?アルミの保温性は?チタンって硬いの?そんな金属のあれやこれやをまとめました。熱伝導率やら強度やらの知識をつけて今日から君も金属革命
概要
金属の性格をプロファイリングしてみたよ。
チタンのクッカーダメって聞いたけどなんで?鉄板で肉焼くとなんで美味しいの?そんな疑問も金属の特性を知れば納得。キャンプギアを選ぶ時に役立てようー。パチパチー
ただ金属って加工によって特性が変わったりするから気をつけてね。(合金って呼ばれるやつね)
でも特殊な使い方や専門的な使い方でもしない限り、加工別の細かい特性まで判断しなくても大丈夫だと思うよ。
金属の特製はよく良い悪いで表されるけど使用目的次第で長所にも短所にもなるので、何に使うのか・何を求めてるのかで判断してあげてね。
熱伝導率が良い金属はケトルではお湯沸かしやすいけどコップだと熱い。とかとか
金属の比較表
金属名 | 重さ(比重) | 強度 (HV) | 熱伝導率 (W/cm K) | 溶融点 (℃) | 耐腐食 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|---|
ステンレス | 8 | 187 | 17 | 1480 | 高 | 中 |
アルミニウム | 3 | 35 | 237 | 657 | 中 | 中 |
ジュラルミン | 3 | 130 | 134 | 571 | 低 | 中 |
鉄 | 8 | 110 | 80 | 1538 | 低 | 安 |
チタン | 5 | 130 | 22 | 1725 | 高 | 高 |
銅 | 9 | 75 | 403 | 338 | 中 | 中 |
※この表はあくまで知らない人用に作った表でニュアンスや個人的見解も含まれているので、金属に詳しい人は自分の知識の方が正確だと思って大丈夫。
※この表を参考にする方はあくまでも金属のイメージや性格を掴む程度に見てください。
ステンレスだけでも何個もの種類がありそれぞれで数値や特性が違ったりするし、強度や金額などは加工や種類によっても変わり、表で出した強度は押し込み強度なので引っ掻き強度や歪み強度はまた別で、熱伝導率とは別に熱拡散率が違うとか、耐腐食も電解腐食や酸化・イオン化などでそれぞれ耐性が違います。
その中で「一般的なイメージはこう」だとか「キャンプ道具ならこうかな」なんて考えながらまとめたものです。
スチール
鉄は硬く重い金属で、強度があるが錆びやすい。
鉄ってやつですね。英語ではIRONともSTEELとも言われるやつ。IRONは鉱石、STEELは加工した鋼材のことを指す。IRONは純鉄でSTEELは人の手が加わってるって感じ。
比較表では安いにしたけど加工次第では高価にもなる。
またステンレスより強度では劣るが、鉄は粘りの強度があるので曲げるとグニャっと曲がり、ステンレスは硬いのでポキっと折れるイメージ(イメージ)
鉄はステンレスより多少軽いけどこの強度を補うために太く厚くしなければならないので重くなる傾向にある。
また熱で歪みやすいので焚き火台に使われる時は多少歪んでも問題ないようにシンプルなものが多い。
あとすぐに錆びるので防錆加工やシーズニングが必要。
鉄と鋼の違いは炭素の量で名称が変わる。
鉄
一般的には鋼も含め鉄鋼製品のことを鉄と呼んでいる。というか普通の人が想像する鉄は99.9999%鋼のこと。専門的には炭素の量0.02%未満の物を鉄と呼んでいて、鋼よりも柔らかく脆い。そして一瞬で錆びる。
鋼
炭素量が多い鋼の方が硬い。基本的に鉄と呼ばれる物のはほとんど鋼のことを指してる。
鋼は鉄に添加物を加えて作る合金なので、細かく分類すると種類も豊富になる。和包丁なんかで有名なのは青鋼、白鋼、黄鋼の3種類とか。青鋼は硬く研ぎにくいが切れ味が落ちにくい、白鋼は柔らかく研ぎやすいが切れ味が落ちやすい。などなど。
なんで鉄板で肉を焼くと美味しいか
お肉を焼くと美味しいってんでキャンプでも流行ってますね鉄板。特に分厚いやつがいいらしい。
これなんで美味しく焼けるかって言うと、鉄は熱伝導率が低く蓄熱性が高いので熱を蓄えて熱量が高くなるから。
厚い分だけ熱を蓄えてくるから分厚い鉄板がいいってことね。

野菜を炒める時も熱量が高いので、野菜自体の水分がすぐに蒸発してパリッシャキッと美味しく焼けるそうな。で、野菜由来の水分で蒸してる状態だから甘みが出るんだとか。
普通のフライパンだと水分を蒸発させるほどの熱量がないので、野菜の水分がフライパンに溜まって野菜がジメーヌメーになっちゃうよ。
また熱の拡散性に優れているので鉄板の一面に均一に熱が広がるから焼きムラなども起きにくく、熱伝導率が低いので焦がすことなくゆっくりとお肉全体に火を通して美味しく焼けると。
そんで均一に熱が伝わるのでダッチオーブンや中華鍋みたいな大きい調理器具は基本的に鉄製。

蓄熱性もあるから火から離しても冷めにくい。(ファミレスの肉料理の皿的な)
ただ冷めにくい分、鉄自体が温まるまでに時間がかかるのは欠点。
※細かい話になると熱伝導率と熱拡散率、熱と温度でまた違ったりするけど長くなるからやめておく。
余談…アメコミで生まれつき強いスーパーマンを「マン・オブ・スティール」、人の手によって強くなったアイアンマンは「アイアン」って逆の意味で使われてるのはとても興味深い。
ステンレス
ステンレスは錆びにくく欠点が少ないスチールの合金。
これといった欠点がないから使い勝手のいい金属。正式名称は stainless steel でステン(汚れ)レス(ない)スチール(鉄)ってことで錆びない鉄だよー意味。厳密には錆びる。
名前通り鉄にクロムなどを混ぜて作る合金で、鉄フェチでもないと覚えきれないくらい種類が多い。200種類以上とか?
用途に合わせて特性もまちまちで、海に沈んでも錆びない物なんかもある。
キャンプギアでも熱伝導率が低いことを活かして色々な製品が作られてる。
クッカー本体は熱伝導率が良いアルミで、取っ手部分は熱くならないようにステンレスで作ってるsnow peakのクッカーとか。
冷めにくいから魔法瓶なんかにも使われてる。みんな大好きTHERMOSもステンレス魔法瓶の第一人者よね。


でも長所は短所でもあるので目的によって使い分けは必要。
炊飯や湯沸かしはアルミクッカーを使い、鍋をする時は冷めにくいステンレスのクッカーを使うなど。
熱に強く強度があり薄くできるので組み立て式の焚き火台のほとんどがステンレス製。
アルミニウム
アルミは柔らかくて軽い金属で、熱伝導率が良く安価な金属。
熱伝導率の高さからクッカーに、軽さから自在金具などの小物に使われる。キャンプでは関係ないけど電気の電動率も良い。
逆に強度がないのでメインペグには向かなかったり、溶融点も低いので薪ストーブなんかには使えない。
アイスのスプーンがアルミなのは指の熱を伝えてアイスを溶かすためってのは有名ね。
アルミで保温?
「何で熱が伝わりやすいアルミが保冷保温目的に使われたりするの?」って思った人はこのページを熟読してるに違いない。アイシテル。
アルミは熱伝導率が良いので熱を伝えない断熱効果はないけど、熱を跳ね返す遮熱効果に優れてるから保冷保温に向いてるんです。
エマージェンシーブランケットやアルミのマットなんかは体温を外に逃さずに反射させて身体を温めてる構造。
ソフトクーラーバッグなんかは外からの赤外線を跳ね返して保冷効果を高めて、その上でアルミシートの中にスポンジを入れて中の冷気を外に逃さないようにして2重で対策してるのさ。
車のフロントガラスにつけてるアルミシートも日光の照りつける熱を跳ね返すため。
下のライフテックさんのYoutubeなんかは遮熱と断熱の違いがわかりやすいかも。
ジュラルミン
ジュラルミンは強度を強くしたアルミの合金。
アルミニウムと銅やマグネシウムを合わせて作る合金。強度を強くした分耐腐食と溶融点が下がったアルミって感じ。
超ジュラルミンとか超々ジュラルミンなんて安直なネーミングの上位版もある。英名はスーパージュラルミン、エクストラスーパージュラルミン。
キャンプギアではコット・イス・テーブル・タープポールなんかに使われてる。
注意が必要なのはアルミポールとかアルミチェアとかアルミなんちゃらって名称でも、スペック見るとジュラルミン(アルミ合金)なんてこともあるし、アルミとしか書いてない物もある。

ちなみに余談だけど、ジュラルミンって名称はDuralumin(ium)の名前の通りアルミの名称を使った合成語。合成相手はジュラルミンを作ったメーカーの所在地Düren(デュレン)や、ラテン語で硬いを意味するdurusから来てる説があるとかないとか。
チタン
チタンは硬くて軽い金属で、熱伝導率は悪く値段も高い。
熱や精密なことを考えなければチタンは硬くて軽くて腐食しない、鉄やアルミの上位種のような金属。
鉄の半分の重さでアルミの2~3倍の強度を持つと言われてる。
ステンレスやアルミと比べると高価なイメージだけど貴金属クラスのスペックがある金属の中では1番安い。
※貴金属とは…希少で腐食しない化学的に安定している貴重な金属のこと。金やプラチナ
とは言っても競合する金属と比べると素材としても高価な上に、加工が抜群に難しいのでその分とっても高価になる。
元は光沢のないグレーっぽい色だが熱を加えると青紫色に変色して、男子はそれがとっても好き。
200℃以上から青く、400℃から紫になるので綺麗なグラデーションが描かれる。

キャンプギアとしてはアルミやステンレスの上位種(?)として汎用的に使われている。
焚き火台、薪ストーブ、ウッドストーブ、クッカー、カトラリー、ペグ、網、などなどいっぱいある。
チタンのペグについてはこの記事も是非読んでみてね。
熱伝導率が悪いのでチタンマグでは外気や手の熱を中の飲み物に伝えずに冷えた飲み物が温くなりにくい、熱い飲み物を入れてもマグが熱くならないなどの利点がある。
他には曲がらない割れない錆びないなどの耐久性や軽く薄くできる利点、焼色が付くなどの効果も。
熱伝導率の悪さで言えばチタン製のクッカーは火の当たっている部分にしか熱がいかないので、全体に火を通すのが難しく焦がしやすいって難点があります。なのでチタンクッカーは主に煮たり湯沸かしなど水分系の調理じゃないと難しい。
チタン製品が軽さの真価を発揮するのは、競合するステンレス製品よりも薄くできる時。素材自体が軽い上に強度があるので肉厚を薄くしてさらに軽量化できる。
ステンレスにチタンを合わせて高温での耐腐食の精度を上げたSUS316Tiって合金なんかもありやんす。Tschumの焚き火台なんかがそれ。
ちなみにチタンはドイツ語、チタニウム(タイタニウム)は英語で、強靭なことからギリシア神話のタイタンから名付けられた。
関係ないけどタイタンの名は大きい物の代名詞として授けることが多い。豪華客船のタイタニック号とか。
銅
熱伝導率がよく柔らかい金属で、溶けやすく腐食しやすい。
熱伝導率がピカイチなので熱交換器など見えない部分に使われる事が多い銅ちゃん。
錆びやすく柔らかすぎるので日用品ではそんなに見かけない。思いつくのは素早く均一に熱が伝わるってことで卵焼き器に使われてたり、抗菌性の高さから排水カゴに使われたり。
銅は腐食すると緑青(ろくしょう)と言われる緑色の錆になる。
他の金属と違いこの錆が保護皮膜の役割も果たしてるらしい。もちろんちょっとずつ腐食は進行してはいる(らしい)。
また銅の抗菌作用が人体にも影響するとか、銅の錆が人体に悪いとかの誤情報から同製品の多くは衛生法かなにかでメッキ加工が必須になってる。
鎌倉大仏や自由の女神が緑色なのは、銅で出来ていて錆びてるから。


キャンプギアで1番よく見るのはペグハンマーのヘッド。柔らかいので叩いた時に銅が潰れてペグに食いつき、腕への衝撃も和らげる効果がある。だけど耐久性が低いので消耗品になる。
あとイーグルプロダクツのケトルは底の部分だけ銅になっていて早く湯沸かしができるようにしてる。寒い北欧ならではのアイデア。


あとは最近流行ってる銅製のマグね。冷えたビールや氷を入れたらカップ全体が冷えてキンキンのキンキンキンを身を以て体感できるキンキンのマグ。銅なのにキン(金)…
ただ熱い飲み物を注ぐとマグごと熱くなるので注意。
僕も好きですコパドアさん。あのコメダ珈琲のマグを作ってるメーカーが運営しているよコパドアさん。
コパドアさんの銅製品に関するよくある質問ページで銅について詳しく書かれてるから見てみてちょ。
ホーロー
漢字では琺瑯って書くけど難しいから片仮名でホーローって書かれる可愛い子。
ホーローは鉄やアルミなどの金属の表面にガラス質の塗り物を塗って焼き付けたもの。
金属の耐久性とガラスの耐久性を持ち合わせてるので、割れにくく酸や菌にも強くなる。金属の様に腐食したりもしない。
食材の匂いが移りにくく、陶器やガラスと違い割れないのでキャンプでは食器によく使われている。
中身が金属なので直火にかけることもできる。キャンプでは関係ないけど電子レンジはNG。とほほ
光沢があるので見た目の美しさもある。
鍋やタッパーは厚めに作られているので蓄熱性も高いので冷めにくく温くなりにくいが、マグカップなどは薄いので特に効果がない。
物自体は金属で出来てるので割れにくいが、表面はガラスなのでコーティング部分は割れやすい。
また長年使っているとガラスのコーティングが剥がれてきて見た目が悪くなる。汚れや焦げがこびりついた時は重曹でキレイにできる。
急激な温度変化にも弱いので、熱くなっている時に水をかけて冷やしたりするのはNG。
ちなみにホワイトボードや道路標識もホーロー。
ブリキ
柔らかく水に強いので腐食しにくい金属。
鋼をスズでメッキ加工した金属で、柔らかく溶融点も低くて加工しやすいので古い時代に愛好された金属。性能で言うと腐食に強い鋼といった感じ。
キャンプではコンテナなどの入れ物として使用されることが多い。
腐食しにくいので液体を使用する用途の缶やバケツなどによく使われる。
ただし水には強いがメッキが剥がれると下地の鋼が腐食しやすく、スズも腐食を促進させてしまうので傷には弱い。
またスズの溶融点が低いので高温になる用途にも使えない。
ブリキの玩具が流行ったのは、戦争による金属の使用制限や加工技術やコスト面でも使いやすかったから。
トタン
柔らかく傷に強いので腐食しにくい金属。
ブリキと同じく鋼をメッキ加工した金属だが、トタンは亜鉛でメッキした金属。性能で言うと腐食に強い鋼といった感じ。
キャンプではトタンもコンテナなどの入れ物として使用されることが多い。あとは湯たんぽなど。
亜鉛が錆びやすいため純粋な耐腐食性能はブリキに劣るが、傷がついた場合は亜鉛が身代わりに錆びてくれるので下地の鋼を腐食から守るのであればトタンのほうが優れている。
傷に強いのはトタン、水に強いのはブリキ。
カーボン

おまけでカーボンについても書き連ねる。
カーボンは元素記号のC、「すいへーりーべーぼくのふね」で言う「く」に当たる炭素のことで、この炭素を使っているだけでカーボンの名が与えられたりするので、カーボン〇〇という名称でも全くの別物と考えてもいいレベル。今までに発見された化合物(7,000万以上)の8割が炭素化合物らしい。
煤のこともカーボンと呼ぶし、繊維状にした炭素繊維(カーボンファイバー)、それを樹脂で強化プラスチック化させた物も単にカーボンと呼ぶ。
キャンプギアで見かける物だと、アクリル繊維を炭化させたカーボンフェルト。焚き火台の下に敷く不燃シートのことね。
それと鉄と炭素を合わせた合金の炭素鋼(カーボンスチール)。オピネルやモーラのナイフで出てるやつね。
カーバイドランプなんかも炭化カルシウムを燃焼させるからカーバイド。
あとビールに含まれてる炭酸も英語でcarbonic acid。直訳かよ
炭素は強度を増すために他の物と化合されることが多い。上でも説明した鉄に炭素を合わせて硬くした鋼など。